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シロアリ駆除はどの薬剤が適切?駆除剤を比較して適切な薬剤を選ぼう
- シロアリ駆除の豆知識
- 2020.02.12
「シロアリ駆除に使う薬剤って種類があるなぁ…どれも同じじゃないの?」
「どの薬剤を使うのがいいんだろう?危険な薬剤を選びたくないなぁ…」
ホームセンターに行くと、シロアリ駆除用の薬剤が数多く販売されているのがわかります。
種類が豊富であることは選択肢が豊富である一方で、どれを選択すれば良いのかわからなくなるというデメリットもあります。
この記事では、シロアリ駆除用の薬剤を適切に選ぶための比較方法について詳しく解説したいと思います。
これから自力でのシロアリ対策を使用と考えている人は、ぜひこの記事の内容を参考にして薬剤を選んでください。
シロアリ用の薬剤には「駆除用」と「予防用」がある
大前提として、シロアリ用の薬剤には「駆除用」と「予防用」の2種類があります。
- ・駆除用の薬剤
- ・予防用の薬剤
駆除用の薬剤
駆除用の薬剤は、シロアリを殺すための薬剤です。
すでに建物がシロアリ被害に見舞われている場合に必要なのは、こちらのタイプの薬剤です。
予防用の薬剤
予防用の薬剤は、現時点ではシロアリ被害が発生していないものの、将来的に発生するであろうシロアリ被害を事前に防ぐための薬剤です。
目的が「予防用」であるため、すでに巣食っているシロアリに対しては駆除用ほど大きな効果を期待することが難しいです。
シロアリ駆除剤の成分とステータス
シロアリ駆除用の薬剤を選ぶ際には、薬剤の「成分」や、成分ごとの「ステータス」を考慮する必要があります。
効果 | 安全性 | 魚毒性 | ドミノ 効果 |
臭い | |
フェニルピロール系 | 〇 | △ | × | ◎ | △ |
フェニルピラゾール系 | ◎ | △ | × | ◎ | △ |
ネオニコチノイド系 | 〇 | ◎ | ◎ | 〇 | × |
カーバメート系 | ◎ | 〇 | △ | × | 〇 |
ピレスロイド系 | 〇 | ◎ | × | × | △ |
薬剤の成分
シロアリ駆除用の薬剤の成分は、大きく分けると以下の5種類に分類されます。
- ・フェニルピロール系
- ・フェニルピラゾール系
- ・ネオニコチノイド系
- ・カーバメート系
- ・ピレスロイド系
フェニルピロール系
シロアリに呼吸障害を引き起こさせる成分であり、高い効果を期待できる成分です。
遅行性が高いのでドミノ効果が期待できる一方で、人間やペットへの毒性も高いため使用には細心の注意が必要な成分でもあります。
魚毒性が高いため、魚類をペットとして飼育しているご家庭では使用を控えたほうが良いでしょう。
フェニルピラゾール系
シロアリ駆除用の薬剤として使用実績の多い成分であり、少量でも高い殺虫効果を発揮して、シロアリの死系伝達作用を阻害して興奮させる作用があります。
一方でフェニルピロール同様に人間やペットへの毒性も高いのがネックであり、どちらの成分もシロアリ駆除効果は高いですが薬剤の扱いに慣れていない人が用いるのにはおすすめできない危険性の高さを持ち合わせているといえます。
ネオニコチノイド系
シロアリの神経伝達に異常をもたらす成分であり、駆除効果と安全性を両立させている成分でもあります。
シロアリ駆除用の薬剤に用いられる成分としては比較的新しい部類であり、タバコなどに含まれている「ニコチン」に似ている化学構造を持ちます。
忌避性や遅効性によりドミノ効果の高さも期待できますが、臭いが気になることと、関連は不明ですがミツバチの失踪に関係しているといわれており、養蜂を営んでいる方には使用をおすすめできません。
カーバメート系
シロアリの神経に作用して興奮状態にする効果がある成分であり、光や熱などの変化に強い性質を持っているため効果の安定性が高い点がメリットです。
デメリットとしては、アルカリによる加水分解を受けやすい点と、「シックハウス症候群」の原因になる可能性があるという指摘があります。
化学物質に敏感な方がいるご家庭では、使用することを控えた方が良い成分だといえます。
ピレスロイド系
人間や一般的なペットへの毒性が低い成分であり、市販の蚊取り線香や殺虫剤にも使用実績のある成分ですが、魚毒性が高い点には注意が必要な成分です。
素人でも扱いやすい安全性の高さを持つ一方で、忌避性がある成分でもあるためドミノ効果が低い点と、散布にムラがあると散布量の薄い箇所から侵入される可能性がある点に注意が必要です。
その性質上、どちらかといえばシロアリ駆除よりも「シロアリ予防」に用いることでメリットの大きい成分であるといえます。
薬剤のステータス
シロアリ駆除用の薬剤には、大きく分けて5種類のステータスがあり、使用する環境や目的に応じて考慮する必要があります。
- ・効果
- ・安全性
- ・魚毒性
- ・ドミノ効果
- ・におい
効果
シロアリを駆除する性能の高さを示します。
市販されている駆除用薬剤は基本的にシロアリに対する駆除作用を示しますが、効果が高い評価を得ている成分であるほど、しっかりとシロアリを駆除することができます。
安全性
人間やペットへの毒性などの影響の少なさを示します。
基本的に1980年代以前まで使用されていた薬剤と比較して近年の薬剤の安全性は高くなっていますが、フェニルピロール系のように安全性が心配される成分があることも事実です。
魚毒性
魚類に対する安全性を示します。
この性能に難がある成分の場合、魚類への影響が懸念されることを意味しています。
魚毒性が心配で安全性は高い成分であれば人間や魚類以外へのペットへの影響は少ないということを意味しますので、魚類を飼育しているかどうかでこのステータスを考慮する必要があるかどうか変わります。
ドミノ効果
「伝播性」の高さを示すステータスであり、成分が付着したシロアリが巣などにいる他の個体へも殺虫効果を及ぼすかどうかを示します。
このステータスが優れているということは、「シロアリを『巣ごと』駆除できる可能性が高い」ことを意味しています。
基本的に下記の種類の性質を持つ成分が、このステータスの評価を高めています。
- ・遅効性である
- ・忌避性が低い
におい
においの強さを示します。
このステータスが優れているほど無臭に近く、逆にこのステータスに難があると周囲ににおいが及びやすいことを意味しています。
基本的にシロアリ駆除には影響しないものの、使用者や使用した周辺の住民に悪影響を及ぼすため、可能な限り低臭な薬剤を選択したいところです。
目的に応じた成分の選び方
以上をふまえて、どういった目的であればどの成分の薬剤を用いるべきかについて解説します。
- ・しっかりと駆除したい
- ・魚類を飼育している
- ・駆除ではなく予防がメイン
しっかりと駆除したいなら「フェニルピロール」や「フェニルピラゾール」
シロアリ駆除効果が高く、ドミノ効果の高さも評価できる「フェニルピロール系」や「フェニルピラゾール系」は、シロアリを巣ごとしっかりと駆除するのに役立つ成分です。
少量でも十分な効果を期待できる一方で人間への毒性の高さも気になる成分であるため、薬剤の散布などの作業に慣れている人でないのであれば、あまりおすすめできない成分でもあります。
魚類を飼育しているなら「ネオニコチノイド」
魚類を飼育しているご家庭であれば、魚毒性の低い「ネオニコチノイド系」の薬剤をおすすめします。
魚類以外のペットや人間にとっても高い安全性を示すため素人にも扱いやすい性質を持っていますが、においの強さが少し気になるところです。
近隣に住宅の多いご家庭では使用を控えた方が良いかもしれません。
安定した効果を期待したいのであれば「カーバメート」
環境による効果の変動を考慮しなくて済む「カーバメート系」の薬剤であれば、素人でも安定したシロアリ駆除効果を期待できる薬剤としておすすめです。
ただし、シックハウス症候群の原因になる可能性があることと、ドミノ効果の低さが難点となるため、安全にしっかりとシロアリ駆除するには家族や周辺住民への配慮と、シロアリの性質を把握・考慮する必要があります。
屋外での使用であればシックハウス症候群のリスクを考慮しなくて済みます。
駆除ではなく予防がメインなら「ピレスロイド」
この記事の本筋とは少し外れますが、現にシロアリ被害に悩んでいるわけではなく、あくまでも「予防できればいい」というのであれば、忌避性を示す成分である「ピレスロイド系」の薬剤がおすすめです。
人間やペットへの安全性は高いですが、魚毒性が気になる点と、すでにシロアリ被害が進行している場合には他の成分の方が駆除効果が期待できる点には注意が必要です。
シロアリの「羽アリ」が飛来してきた際の駆除にも、この成分が役に立つでしょう。
おすすめのシロアリ駆除剤8選
シロアリ駆除に詳しくない人でも「自力でシロアリ駆除したい!」という場合におすすめの、シロアリ駆除用の薬剤を8つ紹介します。
- ・ミケブロック
- ・シロアリフォーム
- ・シロアリジェットプロ
- ・エバーウッドS-400
- ・虫コロリアース
- ・タケロックMC50スーパー
- ・水性アリシス
- ・イカリシロアリハンター
ミケブロック
安全性の高いネオニコチノイド系(有効成分:ジノテフラン)のシロアリ用薬剤であり、においの原因となる成分(揮発性有機化合物)を含んでいないためほとんど無臭に近いことが評価されている薬剤でもあります。
また、揮発しにくい性質をもっている薬剤であるため、使用した建物の住人への悪影響が少ないという安全性の高さも評価されています。
シロアリフォーム
フェニルピラゾール系(有効成分:フィプロニル)の薬剤であり、使いやすいスプレータイプ(噴霧器等を使用しなくて良い)の商品です。
駆除効果の高いフェニルピラゾール系なのでしっかりと駆除できる一方で、人体への毒性が懸念される強い成分でもあるため、使用上の注意をよく確認して安全に使用することを心がけてください。
シロアリジェットプロ
ピレスロイド系(有効成分:トラロメトリン)の薬剤であり、シロアリ予防や羽アリ駆除などに役立ちます。
プロも使用する木材防腐剤が配合されているため、住宅の木材を傷めることなくシロアリ対策できます。
ちなみに名前にある通りシロアリ用の薬剤ではありますが、黒アリやムカデ、ゲジやヤスデといった虫にも効果があります。
エバーウッドS-400
業務用のシロアリ駆除用エアゾールであり、同じく木材を食べる害虫である「キクイムシ」にも効果を発揮する薬剤です。
安全性の高いピレスロイド系の薬剤を2種類配合(有効成分:ペルメトリン、d-T80-フタルスリン)している商品であり、即効性と残効性を兼ね備えています。
目の前のシロアリを駆除するだけでなく、優れた残効性は予防用薬剤としての利便性を高めます。
なお、白壁に使用すると変色のおそれがありますので注意してください。
虫コロリアース
ピレスロイド系(有効成分:シフルトリン)とカーバメート系(有効成分:プロポクスル)の2種類の有効成分を配合している粉材タイプのシロアリ用薬剤です。
即効性と残効性を持ち合わせる性能を発揮し、シロアリの他にもさまざまな不快害虫の駆除に役立ちます。
どちらの成分もドミノ効果は低いため、巣にいるシロアリまで駆除する効果は期待できません。
目の前のシロアリ駆除用、またはシロアリ予防用として使用するのが良いでしょう。
タケロックMC50スーパー
ネオニコチノイド系(有効成分:クロチアニジン)のシロアリ防除用土壌処理剤であり、マイクロカプセル化することで効果の持続性を高めています。
噴霧器を使わなくても希釈した薬剤をジョウロで散布できるため、使い勝手が良いです。
ネオニコチノイド系ですがレビューによると「においが気にならない」とのことであり、お値段はそれなりですが50倍希釈なので広範囲に使用しても余るという意見も多いです。
水性アリシス
ピレスロイド系(有効成分:シラフルオフェン)の薬剤であり、防腐剤(シプロコナゾール)も配合しているためシロアリ対策だけでなく木材の防腐・防カビ効果も期待できます。
有機溶剤を含まず、厚生労働省の「室内気中濃度指針値」に該当する物質を含んでいない薬剤です。
有色タイプ(オレンジ色)なので施工箇所が一目でわかります。
イカリシロアリハンター
「ビストリフルロン(脱皮阻害剤)」を有効成分とするベイト剤であり、これまで紹介した薬剤と違って散布するタイプではなく「設置」するタイプの薬剤です。
土に埋める、または被害箇所にテープ等で固定することで設置し、毒エサを巣に持ち帰らせることでシロアリを巣ごと駆除できます。
噴霧器などの特殊な道具は不要であり、有効期間は約2年、駆除にも予防にも使用できます。
本格的なシロアリ駆除は業者に依頼するのが一番!
これまで、シロアリ駆除用の薬剤についてのさまざま解説を行ってきましたが、シロアリ駆除に詳しい身としては、シロアリ対策に詳しくない人が薬剤を用いて自力でシロアリ駆除を行うことはあまりおすすめできません。
- ・シロアリ駆除は手間がかかる
- ・人やペット、建物の健康を損なう可能性がある
- ・費用は抑えられるかもしれないが…
シロアリ駆除は手間がかかる
一口に「シロアリを駆除する」といっても、必要な作業はそれなりに多いのです。
- ・シロアリ被害を調査する
- ・シロアリ駆除用の薬剤や装備(防護服や噴霧器、穿孔機など)を用意する
- ・床下などの狭い場所への通路を確保する
- ・木部処理や土壌処理を行う
しっかりとシロアリ駆除をしたいと考えるのであれば、それなりの手間がかかることは覚悟しなければなりません。
人やペット、建物の健康を損なう可能性がある
シロアリ駆除には専用の薬剤を使用する必要がありますが、前述の通り薬剤の中には人体やペットへの悪影響が懸念されるものが多いです。
比較的安全性の高い薬剤であっても使い方次第で大量に吸引して健康を害したり、周辺住民にも波及する可能性も捨てきれません。
また、シロアリ駆除は建物の重要な部分がある場所での作業も含まれており、必要に応じて木部に穴を開けて薬剤を注入するなどの作業が必要になりますが、作業の仕方次第では建物に大きなダメージを与える可能性があります。
こうした作業に慣れていない人だと、作業する本人がケガしたり、薬剤の影響が家族やペットに現れたり、建物の耐久性を損ねる結果になる可能性が捨てきれないのです。
費用は抑えられるかもしれないが…
シロアリ駆除を自力で行う、つまり業者に依頼しないことの最大のメリットとして、よく「費用を抑えられる」という話を聞きますが、果たして本当にそうなのでしょうか?
自力で行えば人件費がかからないので、シロアリ駆除にかかる費用自体は抑えられるかもしれません。
しかし「費用対効果」で見ると、大きく損をする可能性があるのです。
- ・自力でのシロアリ駆除:費用は安い、効果は低い
- ・プロによるシロアリ駆除;費用はかかる、効果は高い
自力でのシロアリ駆除の最大の問題点は「完全駆除が難しい」ことです。
いくら優秀な薬剤を用意しても、使い方が間違っていればシロアリを完全に駆除することはできません。
結果、薬剤を使うだけ使ってもシロアリ被害は一時的に収まるかもしれませんが、再発リスクを残すことになるので再施工や被害拡大による原状回復にかかる費用などが発生し、結果として高くついてしまうケースが多いのです。
損得のことを考えるのであれば、結局のところそれなりの費用を払ってでも業者に依頼してしっかりとシロアリを駆除してもらう方が結果的に得をするケースが多くなるでしょう。
まとめ
シロアリ駆除は効果や安全性などが成分ごとに異なるので、使う場面を想定して最適な選択をすることが重要です。
ですが、シロアリ予防は比較的簡単でも、シロアリを駆除することは優れた薬剤の力を借りても施工者のテクニックや経験が伴わなければ、宝の持ち腐れとなってしまうでしょう。
すでにシロアリ被害が発生しているのであれば、被害が拡大する前に業者に相談して調査してもらい、必要に応じて駆除を依頼することをおすすめします。